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「上京物語7」



写真は、工房にて紹介された樺桜材の駒台。

初期の試作品との事で、最初は真っ白な木肌だったそうだが、
数十年という長い年月の「ヤケ」で、ここまで素晴らしい木味に育っている。



一方、こちらは悪い例。

駒箱にはよくある「ヤケ」だが、これではまるで「宇宙人登場」である(笑)


駒箱の場合は、その用途や“カマエ”がある構造上、ある程度は仕方ないとも言えるが、
キチンとした場所に然るべき収納をしていれば、ここまでクッキリ色分かれる事はない。

“モノ”には、それぞれその性質に見合った管理法がある。

棋具の場合、その性質や材質を知り理解しておく事で、そこには“愛着”というものが芽生え、
木味は理想的に育ってゆく。
如いては、それが材質の“潜在”を上手に引き出す近道ではないかと筆者は感じている。

無論、使用・保管環境には個人差もあり、新品の状態から既に「鑑賞美」としての機能を備える作品もあるが、「用の美」を好む筆者とは、また「別基準の嗜好」なので、必ずしも全てに当てはまる訳ではない。

筆者が推奨する木味の育て方は、何より「触れる」という事である。

駒の場合であれば「指し将棋自体を好きになる事」と言っても良いだろう。

「触れる」という事は、少なくとも“モノ”が一箇所に点在する事はない。
乾拭きの手入れだけでも良いので、とにかく“触れてやる事”が一番肝心である。

しかし、日本人とは統計的に“セッカチ”な性格である。

「飴色の駒」には憧れるものの、新品を使い込んだり磨いたりする手間は疎い、
かと言って、中古の使い込まれたキズだらけの駒は尚のこと嫌う。

挙句に、あらゆる手段で早急に古色にしようと試みて、取り返しのつかない失敗をしてしまったり、
情熱が続かず、保管したまま更に状態が悪くなってしまった駒など、筆者はこれまで数多く遭遇したものである。

タイトル戦などで歴戦を戦い抜いた駒や棋具を拝見すると、誰もが存大な魅力を覚えると思うが、
それらは絶対的に「使用される事で“触れられて”育った道具」である。

大事に“触れられてきた”愛用品は、必ずや持ち主の期待に応え、素晴らしい味わいを魅せてくれるものだと信じている。

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