「盤駒」など、棋具との接し方は人それぞれである。
実用志向をはじめ、純粋なる美術・鑑賞志向、投機目的をも含めた骨董志向など、
各人さまざまな意識を元に、この狂気の世界へと足を踏み入れてゆく。
当然ながら、その種類によって管理方法も異なるものである。
一般的に、棋具収集は“手に入れる事”自体に満足し、ほぼ死蔵してしまう傾向が強い印象にあるが、
これはある意味、誰もが持ち得る人間の「性」でもあり、至極仕方の無い心情心理と言えようか。
しかし、短気で利己主義の筆者は、まずこれが我慢出来ない。
このあたりは感覚の世界だが、筆者が棋具の死蔵を嫌う理由は“モッタイナイ”という意識もあるが、
上手な管理をすれば、現状維持はあっても、良くなる事はほぼ有り得ないと思うからである。
3年くらい前の記事で、
「駒の手入れ」と題して、一度管理法を取り上げた事もあるが、
現在、筆者はほとんど布盤を使用していない。
現在では、来客などの対局時以外は、普段使用する盤駒にも結構偏りが見られるようになった。
しかし、元来の貧乏性である筆者は、その他の棋具を決して「死蔵」させるような事はしない。
その秘策とも言える手段が“日頃の手入れ”である。
以下は、筆者の個人的な棋具の管理法を紹介してみたい。
まず、大前提として申し上げたいのは、“筆者は棋具を汚さない”と言う事。
例えば「駒」の場合、その「駒」を汚す一番の原因は「盤」である。
キレイな盤面なら、おおよそ駒が激しく汚れてしまう事はない。
駒を汚さない最良の方法は、盤面をキレイに保つ事と言っても過言ではないだろう。
その盤面汚れの主な原因は「ホコリ」
中でも“砂”ホコリは最大敵で、大事な盤駒に思わぬキズを付けてしまう事にもなる。
このホコリの付着は、掃除不足の散らかった部屋などの環境もあるが、
盤面のロウがしっかり拭き取られていない事も要因である。
駒の手入れは「乾拭き」が基本だが、汚れてしまった駒は磨かなければならない。
この「拭く」と「磨く」では、労力が大違い。
日頃の手入れを容易にする為にも、将棋を指す環境には十分な配慮をされたい。
筆者の駒の「乾拭き」の作業は、特に力もかけず、スムーズで流れるような作業である。
したがって、居間でTVを観ながらなど、比較的リラックスした状態で行っている。
この場合、布を下に敷く場合と手に持つ場合とがあるが、筆者は圧倒的に前者のタイプ。
ちなみに、下に敷く布はやや厚めにしておくのが、面取り効果も意識したちょっとしたコツである。
宝石を扱うように両手に持って懇切丁寧に磨かれる方もいるが、これは筆者とは志向が異なる手法。
筆者は、道具に対して必要以上に神経質にならないタチである。
布は古着などの柔らかい生地で、その素材にも特にこだわりは無い。
ただ、新品の生地だとホコリが出るので、やはり古生地の方が良いだろう。
当然ながら、椿油などの使用は皆無。
漆に良くないのは有名な話だが、何より筆者はあのベタツキ感が大の苦手。
やむなく駒の汚れを落とす場合など、極々微量なら然程問題無いのかもしれないが、
筆者の場合は、まず駒に使用する事はない。
ちなみに、盤や駒台・駒箱などは、その登場の機会の多くが対局時などに限られるものだが、
盤は年に1度、自身で「ロウ引き」作業を行っている。
これは、盤師の指導によるものでもあり、ロウの伸びが良い夏季に作業するのが望ましい。
ただし、(指し跡が付いた)盤面や盤裏は乾拭きだけで、わざわざ脚を外してまでの作業はしない。
以上が、筆者のおおまかな棋具の管理法である。
筆者は、年に2~3回を「お手入れの日」と定め、半日~1日を費やして作業をするのが恒例となっている。
一般会社勤めの方なら、GWやお盆休暇、年末年始などを利用するのも良いだろう。
ただし、各人それぞれの環境があるので、必ずしもこれを推奨するものではない。
以前も述べたが、筆者の場合、棋具の手入れは「触れる事」が主旨である。
日頃ほとんど使用しない棋具でも、触れる事によって、また盤上に駒を並べたくなってきたりする事がある。
これこそが死蔵を避ける「手入れの副産物」であり、筆者が唱える“愛着”たる所以なのである。
[7回]
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