昨年11月より本年2月に渡り「将棋普及サミット」が全国10都市にて開催された。
筆者も参加させて頂いたが、各地区の支部長さんや道場経営者の方々などにより、
連盟側と、将棋の普及に対する積極的な意見交換が行われていた。
将棋は日本の伝統的な文化であり、礼節を学ぶという意味でも格好の題材である。
しかし、一方では「大衆娯楽」であるという一面も忘れてはならない。
「娯楽」には「楽しさ」が大事であり、この「楽しさ」こそが普及の源である。
現代では、生活の向上や社会文明の進歩などにより「娯楽」も多様化が進んでいる。
将棋界にとって、これは少なからずともマイナスに起因している事は間違いないだろう。
その代表的なものが「デジタル」社会である。
この「デジタル」社会は「バーチャル」という仮想世界を生み出し、
一見すると将棋界にも、普及などに大きな利点をもたらしていると思われがちだが、
筆者は「バーチャル」では、将棋の持つ魅力の本質は伝えきれないだろうと感じている。
「将棋」というゲームは、実に独特な魅力を秘めている。
実際に盤と駒を使用して、駒音を響かせる快感はその代表的なものであり、
対戦相手を目の前に、ボヤキがあったり、時には得意なる視線を送ることもある(笑)
一喜一憂の様々な挙動や感情が、盤側で体感的に交錯することに大きな醍醐味がある。
また上達してくると、所作や道具の質にも関心が及ぶこともあるだろう。
これは「バーチャル」の世界では決して実感出来ない要素である。
「バーチャル」な世界は、浸透も早いが冷めるのも早い。
一方、体感で覚えたものは脳に強く記憶され、長く生き続けるのである。
子供においても、野球少年が新しいバットやグローブを欲しがるように、
将棋少年(少女)が、将棋盤と駒を欲しがるようにならなければいけない。
実際に盤・駒を使用して、将棋を指す喜びや快感を伝える事こそが真の普及である。
将棋は「アナログ」にこそ、その大きな魅力を秘めるのではないかと思っている。
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