関西(の一部)では、歩兵のことを「ひょこ」と言う。
その語源は不明だが、「『ひょこ』っと現れる」などの言葉に汎用されるように、
なんとも抽象的で洒落っ気あるネーミングではないだろうか。
「焦点の歩」「叩きの歩」「垂れ歩」など、歩兵ならではの厳しい手筋も多いが、
それらを総括して称される「手裏剣」などは、筆者が最も好むネーミングである。
「手裏剣一発!」とばかりに、盤上に絶妙の歩を打ち込む瞬間は真に快感であり、
この感動も「バーチャル将棋」では味わえない、指し将棋の大きな醍醐味と言えよう。
前回の記事でも、「一歩千金」や「歩の無い将棋は負け将棋」などの格言に触れたが、
いちばん安くも数多きこの駒は、ほとんどが「犠牲」という儚き運命を辿る事となる。
しかし、北島三郎先生の御唄「歩」の中に、その本音は宿る。
「歩には歩なりの意地がある」
「いつかと金で大あばれ」
いやはや、まさしく「歩兵」はこんな気持ちなのだろう。
「世間歩が無きゃ成り立たぬ」
これには「言い得て妙!」と拍手を送りたい(笑)
[9回]
PR