囲碁や将棋の脚付き盤の裏には「ヘソ」と呼ばれる彫り込みがある。
「ヘソ」は別名「音受け」とも言われるが、実際は盤材の「呼吸」が主な目的である。
その昔、勝負の最中に横から口出しした者の首をハネて、
その生首を、裏返しにした盤の上に置いた『血溜り』と言う説もあるが、
筆者は、この手のオカルト的な話は信じていない(笑)
完全乾燥材とは言え、加工されてもなお盤材は生きて(呼吸して)いる。
木材は呼吸する事で、その環境対応により「ワレ」や「歪み」を引き起こしてしまう。
そのため完成した盤には、その呼吸を止める「ロウ引き」の仕上げが施されているわけだが、
「ヘソ」が、その唯一の空気穴的な役割を担っていると言われている。
やはり完全に呼吸を止めてしまっては、木も窒息してしまうと言うことだろうか?
この「ヘソ」には、「大きさ」や「深さ」「形状」など、
職人によって、それぞれに異なった特徴が見られるのも面白い。
特に「ヘソ」部のロウ引きについては、全くされなかったり全部に施したり様々だ。
「ヘソ」部全体をロウで塞いでしまっては、盤の「呼吸」が全く出来なくなってしまう。
かと言って全くロウを施さないのも、「呼吸」の激しい木口面からワレが生じる恐れもある。
正着は「ヘソ」の木口面にのみロウ引きを施し、柾目面にはしないのが一般的である。
昨今では榧材の貴重さからの恐れ?なのか、
その「ヘソ」の深さに於いても、比較的浅い彫りが多いように思う。
しかし筆者は、写真のように彫りの深い、鋭く尖った迫力のある「ヘソ」が好みである。
一般的に「ヘソ」は日常的に目に触れられる部分ではないが、
本来の目的(呼吸)を効率的に機能する為には、かく形状であるべきではないか。
これこそが「ヘソ」の奥義?であろうと筆者は思っている。
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