写真は、鉋削りにて仕上げられた盤面。
当初「日向材」として持ち込まれたこの盤を見て、盤師はしばし沈黙。
やがて無言で計測を始め、荒削り~仕上げ鉋へと作業を進めていく。
作業中、しきりに鉋の削りカスを嗅ぐなど、どこか落ち着きが無い。
しばらくすると「この材は四国の榧だろう」と盤師。
いわゆる高知県「大正榧」である。
はじめ沈黙だったのは、一目見て、若干の違和感を覚えたものの、
その木質は悪くなく、鉋で削ってみるまでハッキリしなかったとの事。
これは日向榧と比較しても遜色ない、大正榧の上等クラスだと言う。
盤師には、様々な産地の榧材を扱う職人もいれば、
特定の産地を中心として扱う職人もいる。
当然ながら、双方とも単に目利きにも優れるものだが、
特に後者の場合、普段と違う産地の榧材が持ち込まれると、
その芳香や雰囲気などから、スグに違いに気付くと言う。
ちなみに中国産は削った感じの木質も堅く、若干酸味かかった芳香らしい。
日向産をはじめとする良質の榧材は、木目もクッキリと鮮やかで、実に美しい。
写真の盤面に升目が引かれた姿を、是非想像していただきたい。
盤側には島桑杢の駒台が添えられ、同材で造られた駒箱が置かれている。
その駒箱からは、筆者好みの「水無瀬」の赤柾駒などが散りばめられ、
駒が並び終えたその盤上は、盤と駒の柾目が融合した素晴らしい景観が完成する。
もし筆者がこの環境で対局したら、おそらく初心者にも負けてしまうだろう(笑)
「人間万事塞翁が馬」
禍福は裏オモテ、とはこんなモノです。。。
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