薄い駒が好きだ。
前回も触れたが、現代駒の多くは一昔前と比べて駒形が大きく厚めに成形されている。
この駒形の好みには個人差もあり、プロ棋士でも
「厚めの駒の方が掴み易くて好きだ」と言われる方もいる。
しかし「指し心地」に重点を置いている自分としては、厚みのある木地だと
指した時の「指に感じる駒の着地感」に乏しく、何か物足りない野暮ったさを感じてしまう。
かと言って、加藤(一)先生のように毎度ゝゝ強く打ち付ける訳にもいかず、
適度に榧(盤)の弾力性を指に感じて楽しみながら指したいが為の独自のこだわりなのである。
ちなみに加藤(一)先生は、上下左右に駒が密集したピンポイントの升目にも
駒同士を接触させる事無く「ビシィィッ!」っと力強くピッタリ収められる。
あれはあれで、ひとつの卓越した「プロ技」であると言えよう。
薄い駒形の駒が盤上で並んでいる景色は、
低く、まるで駒が盤に貼りついているかのような一体感がある。
これが厚い駒形だと、悪く言えば「スゴロク」の駒を配置しているかのようにボッコリとしていて、
「盤に並んでいる」と言うより「盤に置いている」という感じがする。
反面、弱点は駒が掴みにくくなる事。
昔の櫛材を用いた「静山」の駒などは大変に薄く、
肌が乾燥する冬場では指が滑って余計に掴みにくい時もある。
「龍山」の駒などは、薄さに加えて、まるで「雛駒」のように非常に小振りな駒もあり、
これはもはや実用には完全に向かない駒である。
某・名駒師によると、
「昔はプロ棋士の先生でも、駒の大きさや厚さなどの詳細なこだわりを添えた注文があった」
と言う。
現在では、そのような細かい希望内容まで伝える注文者はいなくなったのだろう。
※自分だけかも知れません。。。駒師の方々ゴメンナサイ!(汗)
写真は、サラ木地との比較。
若干ではあるが、通常このくらいまで薄い駒へと成形して頂く。
それにしても、比べて分かるが「使われた駒」の味わい深くなんとも美しいことよ!
これこそまさに「用の美」であると言えるのではないだろうか。
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