第67期名人戦七番勝負は、羽生名人が通算6期目(歴代単独4位)となる
フルセットの末の防衛にて幕を閉じた。
一方の敗れた郷田挑戦者だが、森内名人戦に続きフルセットまで持ち込んだその剛力は、
まさしくA級棋士を代表される、堂々たる実力者と言えるだろう。
しかしながら最終局の終盤では、いささか迫力を欠いたような、
「郷田九段らしくない」淡白な内容だったようにも感じた。
別の見方で言えば、まず有り得ない事だが、ゴシップ好きな賑者に対しては、
「水面下の圧力」を想像させるかのような、どこか誤解を与えてしまいかねない、
不可解な指し口ではなかっただろうか?
個人的にも、
以前に掲載した「助からないと思っても、助かっている」を
彷彿させるような、ギリギリの白熱した最終局を期待していただけに、
少しあっけない幕切れだったと言うのが、筆者の素直な感想である。
全棋士参加の最高棋戦である「竜王位」と、実力性の歴史に象徴される「名人位」は、
それぞれが最上級タイトルとは言え、その性質は違なるものである。
「竜王」がその年の最強者なら、「名人」はその時代の権威者であろうか。
世間一般では、「木登りの名人」や「ものまね名人」など、
比較的かるい雰囲気で繁用される「名人」という言葉だが、
こと将棋界に於いては、大変に重く、最高の威厳にあふれた敬称である。
先述した「名人は神に選ばれし者」論の賛否性は定かではないが、
歴史ある実力性の権威・象徴である事には間違いないだろう。
今後の「名人位」は、羽生名人がどこまで君臨を続けられるのか?
はたまた、次代の権威と象徴を示す者が近々に現れるのか?
まったく将棋界の未来には、興味が尽きないものである。
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