碁盤や将棋盤の升目は、高級品には「漆」が用いられている。
その「漆」にも産地など品質の差もあり、やはり国産が最高級とされている。
国産漆が高価とされる要因は、ひとつは生産者の減少にある。
ここでも職人の世界同様、「後継者不足」に頭を痛めている所以であろう。
もうひとつは、国産ならではの「伸びの良さ」があげられる。
「お米」は、その産地(の水)で炊いたものが一番うまいとされるのと同様に、
国内で採取する「漆」は、その国の湿度などの気候にもなじみ、
「漆」本来の良さを、存分に発揮できるからであると言われている。
写真は、その国産本黒漆を使用した「太刀盛り」風景。
太刀はその刃を潰してあり、残るその精巧な直性を利用し直線を引く。
湾曲面は、刃が離れる際に漆を引っ張り、美しく線を盛上げるという仕組みである。
間近でみているとあっと言う間なので、誰でも簡単に出来そうに感じるが、
刀を入れてから離れるまで息を止め、横ブレしないように均等のスピードで
盛り終えるその繊細さは、さすがに熟練された職人技である。
実際、この作業の前日には、手の震えを予防する為に力仕事は避けられる。
将棋盤でこの苦労なら、碁盤ではさらに神経を疲労する大変な技術だろう。
盛り上げ駒と同様に、盤の升目も歴戦の使用により磨耗していく。
しかし残念ながら、現在この「太刀盛り」を継承する若い職人は希少である。
升目さえあれば、ゲームとしては囲碁も将棋も十分楽しめるものだが、
本漆で盛られたその美しい直線や光沢の魅力も、日本ならではの文化である。
「職人末期時代」と言われる現世に生きる我々は、大変に幸運なのかもしれない。。。
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