「勝負に口無し!」という事で、
囲碁・将棋盤の「脚」は「クチナシの実」(写真)を模ったデザインになっている。
この「脚」作りは現在では機械彫りが主流となり、職人の手彫りによる「脚」は、
結構な手間や高い技術を要するため近年では非常に稀少なモノになった。
もちろん手彫りなら何でも良いわけではなく、熟練の盤師(職人)が作る「脚」には、
職人によって様々な考え方や拘りがあり、盤の種類や盤厚などにより
その大きさや形状・高さなどの調和を考えて成形されていて、
大変に奥の深いモノでもある。
下の写真は日向榧柾目材の赤味の強い大変木味の良い「脚」
「脚」の好みも人それぞれだが、個人的には、この彫りが深く剣先や山も鋭く尖り、
且つふっくらとした立体感が大変魅力的で好きな「脚」である。
女体ではないが、この細い「クビレ」も立体的な調和がとれていて何とも美しい。
尚、ホゾにより「脚」を指し込む際「オオイレ」を彫る盤師もいるが、
全ての「脚」の面を盤裏にキレイに密着させるのも容易ではなく
一種のゴマカシと言う説もある。
やはり写真の様に、ピッタリ盤裏にスキマ無く密着させてあるのも、
高度な「指物」技術であると言えよう。
(携帯カメラにて撮影)
「脚」作りは、荒彫りした榧材を純水に浸け刃物の入りを良くしてから、
様々な工具を用いて入念に削っていく。
良質の榧材は油分が多く、水に浸しても表面のみで内部まで水が浸透していくことは無い。
正に「槇万年、榧限り無し」といわれる所以である。
そして「脚」にとって一番重要な工程が「磨き」だ。
これを手抜くと、完成後ロウ引きした後に刃物キズが目立ってしまい、一偏に興ざめしてしまう。
しかし磨きには辛抱強い根気も必要で、先述した「クビレ」などが深いほど
その苦労は正に骨を折るものがある。
そうした職人による様々な苦労?により完成された手彫りの「脚」。
一般的には盤本体の木目や木肌に多く注目しがちだが、それを支える力強い「彫刻!」
ご自身の盤をあらためて見直してみるのも、大変趣があって良いのではないだろうか。
ところで、この「脚」にとっての意外な天敵は実は「掃除機」
掃除中、勢い余って「ガツン!」なんて事のない様に十分気をつけられたし(笑)
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