先日、NHKにて「あの人に会いたい 升田幸三」が放送された。
「新手一生」を身上とし、「一生創作」の姿勢を貫いた、
将棋界を代表すると言っても過言ではない、昭和の大棋士である。
冒頭での開口一番、「将棋は人生だ」と言う。
いかにもこの先生だからこそ、似合う言葉ではないだろうか。
放送の中で、特に印象に残ったのが「運」についての言及。
「『運』というものは、確かに大事です」
「成功者は、その運を生かしておりますね」
「それから『勘』ですね」
「あれは分析すると『甚だしい力』とあります」
「それで『技』がしっかりしてなきゃならん」
「いくら『勘』が良くても、技術が・・・」
「あとは『根』ですね」
「まあ、『運 勘 技 根』と、わたしは言っておるんですが」
升田先生は、論説においても大変に達弁である。
まさしく大天才たる所以の、含蓄あるお言葉であろう。
余談だが、個人的に関心を引いたのが、昭和27年・木村名人との王将戦の映像。
盛上げ駒が映るが、現代の大型化した駒とは異なり、薄く小振りな感じの駒である。
時代や作風からして「豊島(龍山)作」だと推測するが、どうだろうか?
筆者自身が
薄い駒形が好みなので、あの低く、盤に貼りついた様な光景が、
いかにも「指す」に形容されるようで、大変に味の良い趣を感じた。
升田幸三 実力制第四代名人。
日常では、日に300本の煙草を吸い、平均3升の酒を飲むと言う。
将棋の実績では、巨人・大山康晴十五世名人には及ばなかったが、
以前の記事でも触れたように、理想主義は現実主義に敗れるものである。
しかし、その抜群の個性や人間味に、今なお根強いファンは多い。
1991年(平成3年)73歳没。
もう、こんな棋士は現れないかも知れない。
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