あるサイトにて、駒箱・駒台の作法についての記述を拝読した。
対局で駒箱を開けて駒袋を取り出す際、駒箱の上蓋をひっくり返し、仰向けに置く棋士もいる。
しかし高級な駒箱などは、職人の製作意図として、もっとも木目や木肌の美しい部位を天板に使用している場合が多い。
仰向けに置いてしまっては、その天板の美しさを隠してしまうばかりか、長年の使用の擦れなどで天板にキズが入ってしまうおそれがある。
その為、駒箱の上蓋はひっくり返さずに伏せて置く事が正しい作法だと言う。
「なるほど!」と、ふと、日頃の自分の作法を顧みた。
ほとんどの場合、ひっくり返さずに伏せて置いている。あ~よかった!(笑)
続いて、駒台の作法について。
一般に盤の木目は、柾目・板目を問わず上下方向に木目が走っている。
その両脇に駒台を設置する際、天板が柾目の駒台なら自然に盤の柾目に沿って合わせがちだが、「斑」や「杢」の入る天板の場合、これには感美的な個人差も出て、統一の作法として定着させるのは難しいのではないかと思う。
「斑」は、通常木目に対して横方向に入るもので、その強弱の差もあり、「杢」は、その「不均等な斑」とでも言うのだろうか、「玉杢」や「孔雀杢」など様々な種類の美しい木肌をみせる。
木目よりも「斑」や「杢」の方が強い場合もあり、盤に合わせる際、木目を基準にするか否かは個人の感覚(センス)によるものになるのではないだろうか?
写真は、駒台・駒箱を自分流にて設置したところ。
師職人が唱える作法では、この向きで正しいのかどうかは分からないが、この駒台は気分によって上下を180度逆さまにするくらいはよくしている。
90度向きを変える事はほとんど無い。
ちなみに、駒箱の「カマエ」は横向きで、盤上の升目中央9升に納めるのが美しい。
確かに、個人的にも対局中継などを観ていて、双方の駒台の向きがチグハグになっていたりすると、何とも景観に耐えないものがある。
しかし、「材」に造詣の深い者なら、そのように一番美しい景観を求めるものだろうが、当の対局者たちは目の前の勝負の方が大事で、駒箱の天板の美しさや駒台の方向などは、気にも留めない「ドウデモイイ」事なのではないだろうか?
仮に、対局前に関係者によって正しく設置されていたとしても、時には対局者自身が「ゲン直し」とばかりに、ワザと駒台の向きを変える事もあるのかも知れない。
アマチュアでも全国区などの強豪は、案外道具には頓着がない傾向にあり、ましてプロ棋士でも、多くの方は必ずしも高級な棋具ばかりは所有されていない。
このあたり、棋具に於いてはアマチュアの方が知識や造詣に深く、数多くの高級棋具を所有されている方が多いのも事実である。
冒頭にて、偶然自分の駒箱作法が正しかったのも、単に自分が「銘木好き」だから、自然に出来ていた所作に他ならないと思っている。
ところで、かの大山(十五世名人)先生は、「良い道具を持てば、将棋を大事にする心が芽生え、将棋も強くなる」と唱えられていた。
しかし、これには含説もあるようで、実際のところ「所有する棋具(の質)と、将棋の棋力は反比例する」という説の方が的を得ているような気がするのは、果たして自分だけだろうか?
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